服部 一郎 氏
(1932-87)
『服部一郎氏を偲ぶ』より
(発行:「服部一郎氏を偲ぶ」編集委員会1988年)
いっぱい仕事をする傍ら、美術に心を寄せ、諏訪への出張の折々に車窓から眺める八ヶ岳の山々に、いつも活力を見出していた亡夫、服部一郎。彼の夢は美しい諏訪湖に望む地に、沢山の人々が訪れてくれる美術館をつくり、自身の人間性を表現することでした。その故人の遺志を継ぎ、何よりも永年私共がお世話になりました諏訪の方々への感謝の気持ちから、この地の文化発展のお役に立ちたいと思い、私財を投じて設立致しましたのが、財団法人サンリツ服部美術館でございます。

主に、服部一郎と株式会社サンリツが収集致しました茶道具、古書画や西洋近代絵画等、約600点の作品を収蔵しているこの美術館の最大の魅力は、東西の芸術文化と出会えることだと思います。重要な収蔵品であります茶道具や陶磁器、古書画などは、私たち日本人が好む侘びや幽玄美の世界に誘ってくれるでしょうし、ヨーロッパの近代絵画は、西洋がもつ創造への力強い世界を堪能させてくれるはずです。
豊かな精神性の時代と言われておりますが、太陽の光にきらめく湖の景色が広がる中ゆったりとお茶を飲みながら、東西の芸術文化を愉しむ。そんな心から落ちつける一時を味わって頂ける美術館でありたいと思います。

皆様には、この美術館にお越しいただき、古来東洋、近代西洋の文化の香りと諏訪湖の風を少しでも感じとっていただければ幸いでございます。
サンリツ服部美術館理事長 服部孝子